ダイオキシン類対策用の防護服について、
毒性やレベルに合わせた保護具を解説

ダイオキシンの主な発生源である廃棄物の焼却施設では、防護服の着用が義務付けられています。
しかし、「そもそもダイオキシンとはどんなものなのか」「どのような防護服を選ぶべきなのか」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ダイオキシンの概要と毒性、濃度レベルごとに必要となる保護具について、詳しく解説します。

ダイオキシンとは

ダイオキシンとは、「ポリ塩化ジベンゾジオキシン(PCDD)」と「ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)」「コプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)」の物質群の総称で、無色無臭の固体です。

正式には、「ダイオキシン類」と言い、水に溶けにくく脂肪に溶けやすい性質があります。また、酸やアルカリなどの他の化学物質と反応しにくく、環境に放出された場合、土壌や水環境中に長期間残留します。

ダイオキシン類が発生する仕組み

ダイオキシン類は、ものを燃焼させる工程で自然に発生する副生成物です。
日本では、ごみ焼却炉からの排出量が国内総排出量の8~9割を占めており、ごみの不完全燃焼や低温での燃焼がダイオキシン類の発生につながっていると言われています。

ダイオキシン類の毒性

ダイオキシン類には200以上の種類があり、その中でも特に「2,3,7,8-TCDD」は毒性が強いといわれています。この「2,3,7,8-TCDD」においては、事故などによって高濃度ばく露をした場合、がんを引き起こす可能性があるとWHO(世界保健機関)の国際がん研究機関(IARC)は認めています。しかし、「関係省庁共通パンフレット」によると、現在の日本においては、通常の環境における汚染レベルではがんになるリスクはほとんどないとされています。
とはいえ、労働者のダイオキシン類へのばく露防止を徹底するため、厚生労働省によって「廃棄物焼却施設内におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱」が設けられており、安全衛生管理体制の確立やレベルに応じた保護具の着用などが義務付けられました。

過去のダイオキシン類による被害

ダイオキシン類による主な被害事例は、1962~1972年のベトナム戦争と1976年にイタリアで起きたセベソ事故、1978年にアメリカで起きたラブキャナル事件です。

1962~1972年のベトナム戦争では、アメリカ軍によってダイオキシン類を含んだ「2,4,5-T」と「2,4-D」の枯葉剤が使用され、その結果、先天性疾患を持つ子どもが多く生まれただけでなく、死産や流産も多発しました。

1976年のセベソ事故では、農薬工場の爆発事故でダイオキシン類120kgが飛散し、周辺のニワトリやウサギ、ネコなどの動物が死亡したり、奇形児の出生率が高くなったりするなどの被害報告がされています。

また、1978年のラブキャナル事件では、ダイオキシン類を含んだ産業廃棄物の埋め立てによる汚染が明らかとなり、多くの周辺住民が立ち退く事態となりました。この事件によって、先天性疾患を持つ子どもの出生や死産・流産も相次いでいます。

1983年には、日本でも都市ごみ焼却炉の灰からダイオキシン類が検出され、大きな問題になりました。

ダイオキシン類対策には防護服が必須

日本では、厚生労働省の「廃棄物焼却施設内におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱」によって、焼却炉の運転・点検作業、焼却炉の解体作業などを行う場合は、適切な防護服(保護具)の着用が求められています。作業者へのばく露を防ぐため、ダイオキシン類の濃度レベルに合わせた保護具を身につけましょう。

濃度レベルに応じた保護具の区分1~4に合わせて選定

濃度レベルごとに必要となる保護具の区分は、以下の通りです。

濃度レベル 必要な保護具 備考
レベル1
  • 呼吸用保護具…防じんマスク又は電動ファン付き呼吸用保護具
  • 作業着等…粉じんの付着しにくい作業着、保護手袋等
  • 安全靴
  • 保護帽(ヘルメット)
  • 保護衣、保護靴、安全帯、耐熱服、溶接用保護メガネ等は作業内容に応じて適宜使用すること。
  • なお、防じんマスクは、①型式検定合格品であり、②取替え式であり、かつ③粉じん捕集効率が99.9%以上(区分RL3又はRS3)を使用すること。また、電動ファン付き呼吸用保護具は、①JIS T 8157に適合するものであり、②標準型であり、かつ③粒子捕集効率が99.97%以上のものを使用すること。
レベル2
  • 呼吸用保護具…防じん機能を有する防毒マスク又はそれと同等以上の性能を有する呼吸用保護具
  • 保護衣…浮遊固体粉じん防護用密閉服(JIS T 8115 タイプ5)で耐水圧
    1000mm以上を目安とすること。ただし、直接水にぬれる作業については、スプレー防護用密閉服(JIS T 8115 タイプ4)で耐水圧2000mm以上を目安とすること。
  • 保護手袋…化学防護手袋(JIS T 8116)
  • 安全靴または保護靴
  • 作業着等…長袖作業着(又は長袖下着)、長ズボン、ソックス、手袋等(これらの作業着等は、綿製が望ましい。)
  • 保護帽(ヘルメット)
  • 保護靴、安全帯、耐熱服、溶接用保護メガネ等は作業内容に応じて適宜使用すること。
  • なお、防じん機能を有する防毒マスクは、①型式検定合格品であり、②取替え式であり、③粉じん捕集効率が99.9%以上(区分L3またはS3)であり、かつ④有機ガス用のものを使用すること。
レベル3
  • 呼吸用保護具…プレッシャデマンド形エアラインマスク(JIS T 8153)又はプレッシャデマンド形空気呼吸器(JIS T 8155)(面体は全面形面体)
  • 保護衣…浮遊固体粉じん防護用密閉服(JIS T 8115 タイプ5)で耐水圧
    1000mm以上を目安とすること。ただし、直接水にぬれる作業については、スプレー防護用密閉服(JIS T 8115 タイプ4)で耐水圧2000mm以上を目安とすること。
  • 保護手袋…化学防護手袋(JIS T 8116)
  • 保護靴…化学防護長靴(JIS T 8117)
  • 作業着等…長袖作業着(又は長袖下着)、長ズボン、ソックス、手袋等(これらの作業着等は、綿製が望ましい。)
  • 保護帽(ヘルメット)
  • 安全帯、耐熱服、溶接用保護メガネ等は作業内容に応じて適宜使用すること。
レベル4
  • 保護衣…送気式気密服(JIS T 8115 タイプ1c)、自給式呼吸用保護具内装形気密服(JIS T 8115 タイプ1a)、及び自給式呼吸用保護具外装形気密服(JIS T 8115 タイプ1b)
  • 保護手袋…化学防護手袋(JIS T 8116)
  • 保護靴…化学防護長靴(JIS T 8117)
  • 安全靴または保護靴
  • 作業着等…長袖作業着(又は長袖下着)、長ズボン、ソックス、手袋等(これらの作業着等は、綿製が望ましい。)
  • 保護帽(ヘルメット)
  • 安全帯、耐熱服、溶接用保護メガネ等は作業内容に応じて適宜使用すること。

出典:厚生労働省「廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱

なお、ダイオキシン類の濃度レベル別に適合する「LIVMOA®︎」の防護服は、以下の通りです。

濃度レベル 「LIVMOA®︎」の適合モデル
レベル1 2000、3000、4000AS、4500AS
レベル2 4000AS、4500AS(推奨)※直接水にぬれる作業を除く
レベル3 4000AS、4500AS(推奨)※直接水にぬれる作業を除く
レベル4 なし

ダイオキシン類対策の防護服には「LIVMOA®︎」

東レが開発した「LIVMOA®︎」では、ダイオキシン類作業従事者の安全・安心を守るうえで欠かせない防護服を展開しています。

従来の防護服は通気性が低く、熱中症や作業効率の低下などの問題が生じていました。しかし、「LIVMOA®︎」の防護服は高い防護性能とともに通気性を備えているため、安心かつ快適に作業に従事することが可能です。

「LIVMOA®︎」の特徴

「LIVMOA®︎」の防護服は、「防じん性」と「通気性」「耐久性」「快適性」を併せもっています。

東レで行った実験では、LIVMOA®3000は他社製品に比べて衣服内温度が足踏み時で最大31%Rh低減し、快適性の高さが示されました。また、各作業での伸びや負荷に対しても強く、作業員の安全を守ります。

防じん性と通気性を両立

保護具の区分レベル1に適合するLIVMOA®2000・3000の防護服は、高レベルの通気性能と優れた防じん性を両立しています。これは、東レの先端素材トレミクロン®によって実現した機能です。トレミクロン®は、ポリプロピレン極細繊維からなる不織布で、繊維1本1本に高度な電石(エレクトレット)機能を付与し、不織布内と不織布外部に強力な電界を作っています。これにより、目に見えない微粒子のごみまでも吸着でき、防じん性と通気性の両立が実現しました。

また、保護具の区分レベル1・2・3に適合するLIVMOA®4000AS・4500ASは、通気性に加え、耐水圧機能も備えた防護服で、耐水圧1000mmH₂O以上が必要な作業に最適です。特に、シームテープ付きのLIVMOA®4500ASは、化学防護服(JIS T 8115)タイプ4(スプレー防護用密閉服)、タイプ5(浮遊固体粉じん防護用密閉服)、タイプ6(ミスト防護用密閉服)にも適合し、多くの現場で活用されています。

まとめ

ダイオキシン類は日本国内において、ごみ焼却炉からの排出量が多く、大きな社会問題として取り上げられた過去もありました。現在では、大気中のダイオキシン類による健康被害の心配はほぼありませんが、焼却炉の作業員などには、必要な防護服(保護具)を装着することが義務づけられています。

焼却炉の運転・点検作業、焼却炉の解体作業などを行う場合は、厚生労働省によって防護服(保護具)の着用が求められているため、ダイオキシン類の濃度レベルに合わせた保護具を身につけましょう。

防護性能とともに快適性も高い防護服をお探しの方は、ぜひ「LIVMOA®︎」をご検討ください。


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