防護服を着用する際の熱中症対策|
発症したときの対処法は?

2021/12/17

<目次>
●防護服の着用時に熱中症になりやすい理由
●熱中症が起こりやすい状況
●熱中症疑われる症状の例
●防護服を着用する際の熱中症対策
●防護服を着用した人が熱中症になった際の対処法
●作業者を守るために

防護服の着用時に熱中症になりやすい理由

防護服を着用して作業する際に熱中症になりやすいと言われます。その理由は何でしょうか?
いろいろな作業現場では、暑いさなかに防護服を着用して現場を駆け回る作業者の姿を見かけることがあります。

粉じんの舞う現場でのメンテナンス作業やウレタン吹付作業では作業着の汚れ防止に、アスベストやダイオキシンなど危険な粉じんがある現場では、間接的に作業者の呼吸器を守るために防護服の着用が必須です。しかし、暑さに慣れていない時期に短い休息で長時間作業をしたり、通気性の悪い防護服で作業を続けるとからだの中の汗が蒸発せず、暑苦しくなりまたストレスがたまります。

この原因は発汗による熱が密閉性の高い防護服に遮られ、からだの外へ熱を逃がすことが難しいためです。そのため体温が上昇し熱中症を起こす原因になっています。

熱中症が起こりやすい状況

熱中症といえば、暑熱環境(炎天下)でのスポーツ観戦や、真夏のグランドで運動した場面を思い浮かべるかもしれません。しかし、それ以外に、梅雨の晴れ間で気温が突然上がった時など、からだが暑さに慣れていない場合にもは発生することもあります。

熱中症が発生した場面を整理すると次のようになります。

  • 1)急に気温が高くなり暑くなった場合
  • 2)アスファルトなどの地面からの照り返しが強い場合
  • 3)気温が高いだけでなく湿度も高く蒸し暑い場合
  • 4)風が弱くさらに日差しが強い場合
  • 5)気温が低くても湿度が高い場合
  • 6)室内でエアコンを付けずにいた場合

そして最近のケースでは、6)の室内型熱中症が増える傾向にあります。

熱中症と疑われる症状の例

熱中症は、身体の体温が上がり体内の熱を外へ出す機能が働かなくなった時に起こるからだの異常です。詳しく説明すると視床下部の体温調節中枢が「体温を何度に調節するか」という設定温度(セットポイント)をコントロールできずに起こる症状です。

この時の熱中症の症状はその重症度で大きく3段階に分類されます。

1)I度:現場での応急処置で対応可能な軽症レベル
・あくび、めまい、立ちくらみ(脳への血流が瞬間的に不十分な場合)
・筋肉痛、筋肉の硬直、こむら返り(発汗により体内の塩分が不足のために起こる)
・大量の発汗
但し、意識障害は有りません。
2)Ⅱ度:病院での診察が必要な中等症レベル
・頭痛、吐き気、嘔吐、気分の不快
・倦怠感、虚脱感
・集中力・判断力の低下(意識レベル:JCS1以下)
このような場合は安静にして水分や塩分を補給後、医師の診察を受けることが必要となります。
3)Ⅲ度:入院加療(場合によっては集中治療など)が必要な重症レベル
・中枢神経関連の症状(けいれんや発作、手足の運動障害、意識が無いまたは呼びかけに対して返事がおかしい)
(意識レベル:JCS2以上)
・体温が高い状態(からだに触れると熱い、熱射病、または日射病)

熱中症の症状と重症度分類
環境省「熱中症環境保護マニュアル2014」より作成

分類 症状 症状から見た診断
Ⅰ度
環境での応急処置で対応できる軽症
●めまい・失神
●筋肉痛・筋肉の硬直
●手足のしびれ・気分の不快
熱失神
熱けいれん



熱疲労



熱射病
Ⅱ度
病院への搬送を必要とする中等症
●頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感
Ⅲ度
入院して集中治療の必要のある重症
Ⅱ度の症状に加え
●意識障害・けいれん・手足の運動障害
●高体温
●肝機能異常、腎機能障害、血液凝固障害

防護服を着用する際の熱中症対策

防護服着用前後の熱中症予防としては、次の4つの施策が有効です。

施策1:防護服を着用する前にからだ自体を冷やす

1)こまめに水分(特に冷水)を補給
2)エアコン・扇風機でからだを冷やす
3)シャワーやタオルでからだを冷やす
4)バケツに水を張り、手足を浸ける

2:防護服着用時にからだを冷やすグッズ(保護具)を使用

1)冷却ベスト
冷却ベストは、2~4個の冷やした保冷剤を装着したベストです。またこの商品の冷却効果は約2~3時間です。
2)コンプレッションシャツ、コンプレッションパンツ
夏の肌着としておすすめなのが、男女兼用コンプレッションシャツ、コンプレッションパンツです。
この肌着の機能は、汗をかいても直ぐに吸収して蒸発するため快適に着用できます。
3)インナーキャップ
ヘルメットの中にかぶるインナーキャップは、汗で蒸れることを防ぎます。種類は豊富で標準のキャップタイプ、バンダナタイプ、ヘアーバンド等の商品が取り揃えられています。
4)ネックバンド
首に巻きつけるタイプのネックバンドは暑さ対策として有効です。
保冷剤を使用するこのネックバンドは首の後ろから首筋まで広く冷却します。

施策3:通気性が高い快適な防護服を選択

1)通気性が高い防護服
初期の防護服は通気性が悪かったのですが、昨今は通気性が良い商品が多数開発されています。
2)ファン付き作業服
服に装着した小型ファンから空気を取り込む空調服は、汗を蒸発させて涼しく作業できる優れた商品です。

施策4:作業環境を改善

作業環境は気温ではなくWBGT値(暑さ指数)に従って改善を実施します。

1)WBGT表示器(熱中症計)の設置
・WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、熱中症予防を目的として1954年にアメリカで提唱された指標です。 その単位は気温と同じく摂氏度(℃)ですが、その数値は気温ではありません。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)であり、からだの熱収支に影響を与える①湿度、②日射・輻射など周辺状況、 ③気温の3つを考慮して計算されます。
そしてこの表示装置を作業現場に導入することが推奨されています。
2)WBGT値の低減
・WBGT基準値を越える作業場所(高温多湿)では、発熱する物体と作業者との間に遮蔽物を設ける。
・野外の高温多湿作業では、直射日光やその他の地面、壁面からの照り返しを遮る簡単な屋根を設置する。
・全ての高温多湿作業で作業時にファンで送風、または冷房で送風が出来るように整備する。
・防護服を着用する際は、防護服の種類によって異なるWBGT着衣補正値を確認し、作業環境を適切に把握することも必要です。
厚生労働省サイトリンク:https://neccyusho.mhlw.go.jp/heat_index/
3)休憩場所の設置
・高温多湿場所の近くに冷房設備を備えた場所または、日陰等の涼しい場所を作る。
また、ベット等の休めるスペースを確保する。
・休憩場所には冷たい飲料水、氷、冷感タオル、おしぼり、塩分補給の飴、シャワー等を設置する。

防護服を着用した人が熱中症になった際の対処法

作業者が熱中症になった場合は、まずどのような症状を起こしているかを詳しく確認します。
重症の場合は素早く救急車を手配します。また病院での対応はからだを冷やし氷枕や氷のうなどで頭を冷やして、からだの熱を取り除くことになります。さらに、水分、塩分等を補うため点滴を実施します。

現場での応急処置は次の順番で行います。

1)涼しい場所へ移動
風通しの良い日陰や温度が低い所に作業者を移動させます。出来れば空調(クーラー)が効いている室内に移すのが良いでしょう。
2)作業着を脱がせ、からだを冷やす
・防護服や作業着を脱がせて、からだの熱を逃がします。また、ズボンのバンドを緩め、下着もできるだけ脱がせて肌を空気に触れさせます。
・露出した肌に濡れたタオルをあて、扇風機等によりからだを冷やします。また、下着や作業服に冷水をかけて冷やすことも有効です。
・冷やした水のペットボトルやかち割氷入りのビニール袋や氷のうで、首の付け根、脇の下、大腿部の付け根を冷やすことも効果があります。

作業者を守るために

1972年に施行された労働安全衛生法は、「職場における労働者の安全と健康確保」と「快適な職場環境の形成促進」を目的として制定されました。この法律施行に伴い事業所規模に応じて安全配慮義務を果たす「衛生管理者」が選任され、労働災害の撲滅が進められています。

ところで熱中症の死亡者数は、厚生労働省発表「令和2年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、2011~2020年の期間にて毎年死亡者が12~30人発生しています。

現在このような状況の中で企業は、「熱中症から作業者の健康をいかに守るか」を重要なテーマに掲げて活動しています。

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